スマホ・PCで呼吸が浅くなる?猫背と横隔膜から考える現代人の呼吸問題

スマホやパソコンを前かがみの姿勢で使用する男女と、呼吸に関わる横隔膜を示したイラスト。猫背と呼吸の浅さの関係を表現した健康記事の画像

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「スマホを見ていると、なんとなく息苦しい」

「パソコン作業が続くと、呼吸が浅くなる感じがする」

「気がつくと肩や首に力が入り、胸だけで呼吸している」

このように感じる人は少なくありません。

スマホやパソコンそのものが直接「呼吸を浅くする」と断定することはできません。しかし、長時間の画面作業で起こりやすい前かがみの姿勢や頭が前に出る姿勢は、胸郭や呼吸に関係する筋肉の働きに影響する可能性があります。

特に注目したいのが、呼吸の中心的な筋肉である横隔膜です。

この記事では、

  • なぜスマホ・PC姿勢で呼吸が浅く感じるのか
  • 猫背と横隔膜にはどんな関係があるのか
  • 「胸式呼吸」「腹式呼吸」をどう考えればいいのか
  • デスクワーク中にできる呼吸対策
  • 病気が隠れている可能性がある場合

について、できるだけわかりやすく解説します。

スマホ・PCで「呼吸が浅い」と感じるのはなぜ?

スマホやパソコンを使っているとき、こんな姿勢になっていないでしょうか。

  • 頭が前に出ている
  • 背中が丸くなっている
  • 肩が内側に入っている
  • 胸が縮こまっている
  • 長時間ほとんど姿勢を変えない
  • 画面をのぞき込んでいる

いわゆる「猫背」「巻き肩」「ストレートネックにつながる姿勢」などです。

この状態では、胸郭(肋骨で囲まれた部分)が十分に動きにくくなることがあります。

実際、頭部前方位と呼吸機能の関係を調べた研究では、前方に頭が出た姿勢で、肺活量などの呼吸機能が低下したという結果が報告されています。

ただし、ここで重要なのは、

「猫背になったら必ず呼吸が浅くなる」わけではない

ということです。

研究によって結果は異なり、2026年の研究では、頭部前方位のある人で横隔膜の持久性や体幹筋の持久性に違いがみられた一方、スパイロメトリーによる呼吸機能には有意差が認められませんでした。

つまり、姿勢と呼吸には関係が考えられるものの、「猫背=呼吸障害」と単純には考えられないのです。

呼吸の主役「横隔膜」とは?

呼吸を考えるうえで重要なのが横隔膜です。

横隔膜は、肺の下にあるドーム状の筋肉です。

胸腔と腹腔を隔てており、呼吸では中心的な役割を果たしています。

息を吸うときには横隔膜が収縮して下方向へ動き、胸郭の容積を大きくします。

すると胸の中の圧力が低下し、空気が肺へ入ってきます。

逆に、横隔膜がゆるむと元の位置に戻り、息を吐く方向へ働きます。

簡単に考えると、

横隔膜が下がる → 胸の中が広がる → 空気が入る

という仕組みです。

そのため、横隔膜は「呼吸の主役」ともいえる筋肉なのです。

猫背になると横隔膜はどうなる?

ここは少し注意が必要です。

「猫背になると横隔膜が押しつぶされる」

という説明を見かけることがありますが、これは単純化しすぎた説明です。

実際の呼吸は、横隔膜だけで行っているわけではありません。

肋間筋や首・胸部周辺の呼吸補助筋など、多くの筋肉が協調して働いています。

姿勢が変化すると、胸郭の形や肋骨の動き、呼吸に関係する筋肉の働き方も変化します。

特に頭が前に出た姿勢では、下部胸郭の動きが小さくなったことを報告した研究があります。

そのため、

姿勢が悪い

胸郭が動きにくくなる

呼吸運動の効率に影響する可能性がある

「息が浅い」と感じる

という関係は考えられます。

ただし、これは人によって程度が異なります。

スマホを見るときに起こりやすい「頭が前に出る姿勢」

スマホでは、画面を目の前に持ち上げるより、胸の前や膝の上に置いて下を向くことが多くなります。

すると、

目線が下がる

首が前に出る

背中が丸くなる

肩が前に入る

という姿勢になりやすくなります。

実験研究でも、頭部を前に出した姿勢では、ニュートラルな姿勢と比較して肺活量などの呼吸指標が低下した報告があります。

つまり問題なのは、

「スマホという機械」そのものより、スマホを使っているときの姿勢と長時間の固定

と考えたほうが適切でしょう。

PC作業でも同じことが起こる

パソコンでは、次のような姿勢になりがちです。

1.画面に顔を近づける

文字が小さかったり、集中していたりすると、無意識に顔が前へ出ます。

2.背中が丸くなる

長時間座っていると、骨盤が後ろへ倒れ、背中も丸くなりやすくなります。

3.肩が前に入る

キーボードやマウスを操作するため、腕が前方に固定されます。

4.呼吸より作業に集中する

仕事や作業に集中していると、呼吸そのものを意識することがなくなります。

こうした状態が長時間続くことで、「呼吸が浅くなったように感じる」ことがあります。

「胸だけで呼吸している」と感じるのはなぜ?

呼吸には、胸郭や腹部を含めたさまざまな動きがあります。

安静時の呼吸では横隔膜が重要な役割を果たしますが、呼吸には肋間筋や首周辺の筋肉なども関わっています。

そのため、

「胸が動いているから横隔膜を使っていない」

と簡単に判断することはできません。

ただ、姿勢が崩れて胸郭が動きにくくなったり、呼吸補助筋に力が入りやすくなったりすると、本人としては、

「胸の上のほうだけで呼吸している」

「息を吸ってもスッキリしない」

と感じることがあります。

自分の「浅い呼吸」に気づく簡単なチェック

医学的な診断ではありませんが、自分の呼吸状態を意識するきっかけとして、次のチェックをしてみましょう。

チェック1:肩が上下していないか

自然に呼吸しているとき、息を吸うたびに肩が大きく持ち上がっていないでしょうか。

肩や首に余計な力が入っていないか確認します。

チェック2:胸とお腹の動きを見る

仰向けや楽な姿勢になり、片手を胸、もう片手をお腹に置いてみます。

普段の自然な呼吸で、それぞれがどのように動いているか観察します。

「お腹を無理に膨らませなければならない」という意味ではありません。

まずは自分の呼吸のクセを知ることが目的です。

チェック3:スマホを見ているときの姿勢

スマホを操作しながら、

「頭が前に出ていないか?」

「背中が丸くなっていないか?」

「肩が上がっていないか?」

を確認します。

意外と、自分では気づかないほど姿勢が変化しています。

呼吸を改善するなら「深呼吸」だけでは足りない

呼吸が浅いと感じると、

「もっと大きく息を吸おう」

と考えがちです。

しかし、いつでも無理に深呼吸を繰り返せばよいというわけではありません。

むしろ大切なのは、

呼吸しやすい姿勢をつくること

です。

例えば、

  • 背中を軽く伸ばす
  • 顎を前に突き出さない
  • 肩の力を抜く
  • 肋骨周辺を締めつけない
  • 同じ姿勢を長時間続けない

といった基本的なことから始められます。

スマホを見る姿勢を少し変えてみる

スマホを完全にやめる必要はありません。

まずは、

スマホを少し高い位置に持つ

ことを意識してみましょう。

画面を膝の上に置いて首を大きく曲げるより、目線に近い位置まで持ち上げるほうが、頭が前に落ち込みにくくなります。

ただし、腕をずっと高く上げて疲れる必要もありません。

ポイントは、

「首だけを大きく曲げない位置」

を探すことです。

PCでは「画面の位置」が重要

パソコンの場合は、画面が低すぎると顔を下に向けることになります。

そのため、

  • モニターを適切な高さにする
  • 画面との距離を確保する
  • 背中を丸めない
  • 肩をすくめない
  • 足を床につける

などを意識します。

そして何より重要なのが、

同じ姿勢をずっと続けないこと

です。

どれだけ理想的な姿勢でも、何時間も固定していれば身体には負担になります。

「姿勢を正す」だけでなく、こまめに動く

現代のデジタル生活では、

「正しい姿勢を維持する」

ことばかり考えるより、

姿勢を頻繁に変える

ことも大切です。

例えば、

「30~60分に一度、立つ」

「水を取りに行く」

「肩を軽く動かす」

「数歩歩く」

などです。

呼吸を改善するためだけでなく、長時間の座りっぱなしを避けるという意味でも役立ちます。

1分間の「呼吸リセット」をやってみる

仕事の途中で、次のような簡単なリセットを試してみるのもよいでしょう。

STEP 1

スマホやPCから目を離します。

STEP 2

背中を軽く起こします。

STEP 3

肩の力を抜きます。

STEP 4

鼻から自然に息を吸います。

STEP 5

無理に大きく吸わず、ゆっくり吐きます。

STEP 6

数回繰り返します。

ここで重要なのは、

「限界まで吸う」ことではありません。

自然な呼吸に戻ることを意識します。

ゆっくりした呼吸については、呼吸・循環・自律神経などへの生理的影響を検討した研究もありますが、呼吸法の効果を過大評価しないことも大切です。

「横隔膜を鍛える」とはどういうこと?

最近は「横隔膜を鍛える」という言葉もよく見かけます。

横隔膜は筋肉なので、呼吸運動に関係する筋肉としてトレーニングの対象になります。

ただし、

呼吸が浅い=横隔膜が弱い

とは限りません。

呼吸の感じ方には、姿勢だけでなく、運動不足、ストレス、呼吸パターン、睡眠、肺や心臓などさまざまな要因が関係します。

そのため、

「横隔膜が弱いから呼吸が浅い」

と自己判断してしまうのは避けたほうがよいでしょう。

「スマホ・PCで呼吸が浅い」は病気とは限らない

ここも非常に重要です。

スマホやパソコンを使っているときに、

「なんとなく呼吸が浅い」

と感じても、それだけで肺の病気があるとは限りません。

姿勢や筋肉の緊張、集中状態などによって呼吸の感覚が変わることもあります。

一方で、息苦しさが続いている場合は、単純に「猫背のせい」と決めつけないことが重要です。

喘息、肺の病気、心臓の病気、貧血など、さまざまな原因が考えられるためです。

こんな場合は医療機関へ

次のような症状がある場合は、「スマホ姿勢のせいだろう」と自己判断せず、医療機関への相談を考えましょう。

  • 息苦しさが繰り返し起こる
  • 徐々に息苦しさが強くなっている
  • 少し動いただけで息切れする
  • 胸痛を伴う
  • 動悸やめまいを伴う
  • 咳が長く続く
  • ゼーゼー、ヒューヒューする
  • 唇などが青白くなる
  • 急に強い呼吸困難が起きた

特に、強い呼吸困難、胸の圧迫感・痛み、唇や皮膚が青白い・灰色になる、意識がぼんやりするなどがある場合は、緊急性のある病気も考えられるため、すぐに救急対応を求める必要があります。

まとめ――スマホより「使い方」と「姿勢」に注目しよう

スマホやパソコンを使うこと自体が、直接呼吸を浅くするとは言えません。

しかし、

スマホ・PCの長時間使用

前かがみになりやすい

頭が前に出る

胸郭や呼吸に関係する筋肉の動きに影響する可能性

「呼吸が浅い」と感じる

という流れは考えられます。

特に呼吸の中心的な筋肉である横隔膜は、胸郭や腹部の動きと連動して働いています。

だからこそ、呼吸が浅いと感じたとき、

「もっと頑張って深呼吸しなければ」

と考えるだけでなく、

「今、自分はどんな姿勢でスマホやPCを見ているのか?」

を一度確認してみる価値があります。

スマホを少し高く持つ。

PC画面の高さを調整する。

肩の力を抜く。

同じ姿勢を長時間続けない。

そして、ときどき画面から離れて自然な呼吸を取り戻す。

こうした小さな習慣から始めることができます。

ただし、息苦しさが続く場合や、胸痛・強い息切れなどを伴う場合は、姿勢だけを原因と考えず、医療機関で原因を確認することが大切です。

「呼吸を深くする」より、「呼吸しやすい身体の状態をつくる」。

これが、スマホ・PC時代の呼吸を考えるうえでの一つのポイントです。