事実とは違うことを正しいと思い込む人への対処法
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ハナコさんは88歳になりますが、若い時から、事実とは違うのに自分が察知したことは正しいと思い込み行動して、周囲に迷惑をかける性格があります。こういうのは、病気でしょうか?また、対処法は何でしょう?
回答
認知バイアス
「自分が正しいと思い込みすぎている」と指摘されたり、「自分が正しい」と思っている人と話したりしたときに、もしかすると何か病気なのではと思う人は少なくありません。
しかし、「自分が正しい」と思い込むことは、心理学的にも自然なことであり、多くの場合は病気ではないでしょう。
誤った(非合理的な)判断や記憶を合理的で正しいと思ってしまうのは、誰にでも少なからず生じる「認知バイアス」が影響していることが多いと考えられます。認知バイアスには、様々なパターンがあるのですが、以下にいくつかの例を挙げてみます。
認知バイアスとは、物事の判断が、直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象のことです。
バイアスという言葉は、もともと布地などの斜めの縫い目や切り方を指していましたが、次第に物事の判断や考え方が偏っていることを表すようになりました。オック語で「傾斜」を意味する「biais」や、古代ギリシャ語で「斜めの」を意味する「epikarsios」が関係しています。
・確証バイアス
自分の仮説や先入観に対して、都合のいい情報だけを無意識的に集めてしまうため、否定的な情報は軽視され、その仮説や先入観を強化してしまう傾向
・自己中心性バイアス
自分だけが知っている情報に左右されて、他人の心の状態を捉えてしまう傾向
・後知恵バイアス
ものごとの結果を知ったときに、それがあたかも最初から予想できていたかのように考えてしまう傾向
上記のような認知バイアスは、状況やその人のものごとの捉え方のパターンによっても程度が異なりますが、誰にでも少なからず生じるものと考えられています。また、自分が正しいと思う程度は、気質や性格(自尊心や自己像のあり方)などにも影響されるでしょう。
診断される可能性のある症状・障害
自分が正しいと思い込むというだけでは病気と判断することができませんが、周囲に異常さを指摘されても否定したり根拠のない自信にとらわれたりしている場合には、次のような障害による影響の可能性もあります。下記の診断は精神科や心療内科などで医師により行われます。
- 統合失調症
統合失調症は、脳のさまざまな機能がまとまりづらくなり、幻聴や妄想に代表される症状があらわれる病気です。本人にとってこの幻聴や幻覚、妄想の内容は確かなものであるため、周囲が否定しても受け入れられません。自分は監視されている、集団で自分を陥れようとしているといった訴えなどからも、周囲の提案を聞き入れづらくなります。しかし、早期治療により回復しやすいので、兆候に気がついたら専門家に相談し、治療につなげることが大切です。
- 双極性障害
双極性障害は、大きな気分の落ち込みが見られる「うつ状態」と気分が高まる「躁状態」を交互に繰り返す病気です。躁状態では、自信にみなぎり、周囲が否定すると怒りっぽくなったり、活動的になって思い切った散財などにより損失を招きやすくなったりします。
はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、薬物療法と心理教育(自分の病気について理解すること)により、症状とうまく付き合いながら生活することができます。
- 心気症
心気症は、自分の心身のささいな変化にこだわり、心臓病やがんなどの重い病気にかかっているのではないかと強く思い込み続ける状態をいいます。検査で異常は確認されないものの、それを信じることができずに次から次へと病院をまわったり医師に必要以上の要求を出したりすることがあります。おもに根本的な不安を緩和する精神療法や、服薬の併用による治療が行われます。
- パーソナリティ障害
パーソナリティ障害は、固有の思考や対人関係のパターンなどの影響により、本人や周りの人が苦しみを抱えて、日常生活に支障をきたしている場合に診断されることがあります。不安定な自己像やこだわり、極端な自尊心などにより、周囲から否定されると攻撃的になったり、治療に協力的でなかったり、自分に問題があると認識していないことがあります。おもにカウンセリングを含む精神療法や、服薬の併用による治療が行われます。
- その他
そのほか、強迫性障害や全般性不安障害では、症状の一つであるこだわりや不安・心配について、自分は少しばかり心配性なだけだと考えて、受診を拒否することが多いとされています。同様に、認知症患者も受診を拒否することが多いです。また、発達障害では、こだわりが強かったり、思い通りにならない場合に強いストレスを感じたりすることがあります。
自分が正しいと思っている人への対処法
まずは、自分が正しいと思い込むことは、人にとって自然なことだと受け入れるようにしましょう。よく「自分が正しいと思い込みすぎている」と指摘されたりして、直したいと思っている場合は、認知行動療法という心理療法やカウンセリングを受けることで、自分の捉え方の癖に気がついたり、柔軟な対応ができるようになったりするかもしれません。
自分が正しいと思っていて、周りの注意を聞き入れず、攻撃的な言動などにより困っている場合に、本人を言い負かそうとする人もいますが、無意味あるいは逆効果であると考えていいでしょう。やみくもに間違いを指摘したり病人扱いしたりせず、言動の理由や考えを本人に確認し、周囲が本当に困っていることだけを伝え、必要に応じて精神科の受診に協力してもらいます。家族に受診を断固として拒否する人がいる場合には、保健師やソーシャルワーカーなどの専門家へ相談し、本人への対応を考えたり間接的に医療機関へ繋いだりするのがよいでしょう。